自分の意思では抑えることが難しい食欲を自然にコントロールし、無理のない体重減少ができると話題になっている皮下注射タイプのGIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」。
SNSでマンジャロ利用者の写真を見るとかなり痩せ型の体型の人が多い印象ですが、実際マンジャロを使うと何キロ痩せるのでしょうか?
そもそも、どんな理由で痩せるのでしょう。マンジャロの名前は知っていても、詳しい仕組みまでは分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では
など、実際の臨床試験の結果データに基づきマンジャロについてのよくある疑問にお答えします。
マンジャロは平均何キロ痩せる?
マンジャロの投与で平均何キロ痩せるかは、元の体重や他のダイエットの取り組み方によって大きく個人差がありますが、実際約1年間の投与で10キロ以上の減量となったメーカーの臨床試験の結果データも出ています。
また、SNSの口コミでは「2週間で4キロ痩せた」や「2ヶ月半で10キロ痩せた」などの投稿も見られますが、元の体重を考慮せずに期間と体重の減少結果だけを見て目標にするのは大変危険です。
食事制限により急激に体重が減少するとリスクも伴うため、マンジャロはあくまでも「痩せやすくなる体質作りのサポート」として取り入れることが重要です。
臨床試験によるマンジャロの体重減少データ
マンジャロの製造販売元である日本イーライリリー株式会社では、マンジャロ(一般名:チルゼパチド)を約1年間投与した場合の体重変化を以下のように発表しています。
投与用量 | 体重減少 |
---|---|
5.0mg | 約5.8キロ減 |
10mg | 約8.5キロ減 |
15mg | 約10.7キロ減 |

参考文献:マンジャロ(チルゼパチド)国内第3相試験(SURPASS J-mono試験)の結果| 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社
結果、1年間のマンジャロ投与で最大10.7キロ減少したという結果になりました。
上記の臨床試験は日本人の2型糖尿病患者を対象にした臨床試験ですが、マンジャロの投与により食欲が抑制され体重の変化があったと見られます。
他のGLP-1と比較した体重減少データ
マンジャロと同様の皮下注射タイプのGLP-1受容体作動薬として、アメリカで肥満症治療薬として認可されている「サクセンダ」や「オゼンピック」などが挙げられます。
サクセンダの臨床試験は、2型糖尿病を患わず・BMIが30kg/m2以上の肥満体型の患者にサクセンダを約1年間投与した結果、体重は約9.5キロの減少という結果になり、プラセボ(偽薬)との結果の差は明らかでした。
また、プラセボと比較してウエストは約8cm減少したという結果が報告されています。

参考文献:Saxenda® (liraglutide) Injection 3 mg Clinical Trials for Weight Loss Results
オゼンピック(一般名:セマグルチド)の臨床試験では、日本人の2型糖尿病患者に対して約1年間投与した場合、下記のように最大用量で約3.0キロ減量という結果でした。
オゼンピックもプラセボ(偽薬)との結果の差は明らかにあるものの、マンジャロ・サクセンダと比較すると体重減少は緩やかな傾向でした。また、グローバル試験よりも日本人向け試験の方が、体重減少が少なかったことも明記されています。
投与用量 | 体重減少 |
---|---|
0.5mg群 | 約2.5キロ減 |
1.0mg群 | 約3.0キロ減 |

参考文献:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構|オゼンピック皮下注 2mg 2.7.3 臨床的有効性
GLP-1受容体作動薬の皮下注射3種類の臨床試験の結果をまとめると、このような結果になりました。
薬剤 | 対象 | 糖尿病の有無 | BMI値 | 減少結果(最大) |
---|---|---|---|---|
マンジャロ | 日本人 | 2型糖尿病患者 | 23 kg/m²以上 | 約10.7キロ減 |
サクセンダ | 欧米人 | 非糖尿病患者 | 30kg/m²以上 | 約9.5キロ減 |
オゼンピック | 日本人 | 2型糖尿病患者 | 25.68〜28.13 kg/m² | 約3.0キロ減 |
マンジャロとオゼンピックはほぼ同条件で、体重減少の結果は3倍以上の差でマンジャロの方が優位な結果に。
マンジャロとサクセンダを比較すると、サクセンダは体重減少幅の大きい欧米人が対象で肥満傾向の強いBMI値と痩せやすい被験者でありながら、体重減少はマンジャロの方が大きい結果でした。
どの薬剤でもある程度の体重減少は見込めるものの、結果を見ると痩せやすさではマンジャロに優位性があるということが言えます。
マンジャロで痩せる理由と仕組み
マンジャロとは、GIP/GLP-1受容体作動薬という種類の薬剤です。
GLP-1 (グルカゴン様ペプチド-1) | 食事後に小腸から分泌される インクレチンホルモンの一種 インスリン分泌促進、血糖値を下げる働き、 食欲を抑え、胃の動きを遅らせる |
---|---|
GIP (グルコース依存性インスリン促進物質) | 食事後に腸壁から分泌される 膵臓のインスリン分泌を促進 血糖値を調節する働き |
マンジャロは、これらGIP/GLP-1両方の受容体に作用する働きがあり、GLP-1のみに作用するリベルサスやオゼンピックなどよりもHbA1c改善作用・体重減少作用が強く見られます。
GLP-1自体は誰もが持っているホルモンですが、量には個人差があり痩せている人はGLP-1が多い(=食欲を抑えられる)ことから、直接薬剤を投与するGLP-1ダイエットが流行。
本来、日本ではGLP-1受容体作動薬は2型糖尿病治療薬として認可されていますが、減量作用があることから自由診療としてダイエット目的での使用が注目されるようになりました。
①食欲の抑制
マンジャロを投与することで脳の視床下部に作用し、満腹中枢を刺激することで食欲を抑制します。
満腹中枢を刺激することで空腹感が減り食事の量が自然と減少することから、特に過食傾向がある人は食事量のコントロールがしやすくなり、無理のないカロリー制限に繋がります。
②胃排出の遅延
マンジャロは、食事後に胃の内容物が小腸へ移動する運動スピードを遅くする働き(胃内容物排泄遅延)があります。
これにより、少量の食事でも満腹感を得られ、食後の満腹感も長時間持続し、その後の食事量を抑えることができます。
また、血糖値の急上昇も抑制できるため、食後の過剰なインスリン分泌も防止し、脂肪蓄積リスクが低下します。
③血糖コントロールの改善
インクレチンに作用し、食後の血糖値の上昇を抑制し安定させる作用があります。
これにより、脂肪がエネルギーとして効率的に使われて体脂肪が蓄積されやすい状態を避け、また血糖値急降下時の空腹感も防ぐことができます。
④インスリン感受性向上による脂肪代謝の改善
筋肉や肝臓などのインスリン感受性を改善することで、血中の糖が効率的に細胞内に取り込まれ、エネルギー対処が活発化されることで基礎代謝の向上に繋がります。
結果、脂肪の蓄積を制御し、脂肪分解の促進により体脂肪の減少にも貢献します。
⑤GIP+GLP-1の作用で食欲制御
マンジャロは、他のGLP-1作動薬と異なりGIPにも同時に作用するデュアルインクレチン作動薬です。
この2つのホルモンが同時に働くことで、GLP-1で抑えた食欲がGIPにより強化され、血糖コントロールにも繋がります。
マンジャロは食べても痩せるの?
マンジャロを投与していると「食べても痩せるのか?」という質問は、半分は◯で半分は×です。
というのも、マンジャロの作用のうち
・食欲抑制により自然と食事量が減る
・胃排出が遅くなり、少量でも満腹が長続きする
⇒この仕組みは「食欲を抑制」することで痩せる結果につながっているものなので、食べてカロリーを過剰に摂取すると痩せることはできません。
しかし、
・血糖とインスリンのコントロールで脂肪蓄積が抑えられる
・インスリン感受性が改善し、脂肪がエネルギーとして使われやすくなる
⇒この仕組みの部分については同じ食事量を摂っていても痩せる作用があると言うことができます。
マンジャロはあくまでも「痩せやすくなる体質作りのサポート」をする薬であり、使うだけで痩せるものではありません。
暴飲暴食やハイカロリーな食事を摂取するとその分ダイエットからは遠のいてしまうので、マンジャロは食生活改善をサポートするものとして捉え、マンジャロ以外の面でもダイエットを意識した生活を取り入れるとより良いでしょう。
【結論】マンジャロで何キロ痩せるの?
マンジャロによる体重減少は、個人差はあるものの1年間で約10キロ程度痩せるということは、メーカーの臨床試験結果で証明されていることがわかりました。
ですが、SNSで見かけるような食事制限による急激な体重減少をすると、
- 筋肉量減少による代謝の低下
⇒痩せにくい体質になりリバウンドのリスクも - 栄養失調
⇒貧血、倦怠感、免疫力低下など - ホルモンバランスの乱れ
⇒生理不順や無月経、肌荒れなど - メンタルへの悪影響
⇒不安、抑うつ、摂食障害(拒食・過食)のリスク
このような身体への悪影響もあるため、無理な使用や過度な食事制限はせず、医師と相談しながらゆっくり自分のペースでうまく付き合ってくださいね。
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